学会長あいさつ

第29回日本小児救急医学会学術集会
学会長 阪井裕一(国立成育医療研究センター)

国立成育医療研究センターの阪井裕一です。第29回日本小児救急医学会学術集会を開催するにあたり、ご挨拶申し上げます。

日本小児救急医学会は現在急速に会員数を伸ばしています。そして、増えている会員の多くは現場で診療・看護を担っている中堅、若手の医師、看護師、コメディカルスタッフです。私は、今回の学術集会をこのような現場の医療者の勉強、情報交換、交流の場にしたい、と考えています。

テーマは「症状から病態に迫る」としました。私たちが日々行っている救急患者の診療・看護の中心は病態の評価であり、病態を評価する際の手がかりは患者家族の訴えと徴候です。私たち医療者は昔、おそらく“医療”の発祥の時より、緊急で駆けつけて来る患者からその訴えを聞き、“病態を考えよう”としてきたと思われます。今や医学は進歩し、遺伝子、分子レベルで疾病のメカニズムに迫れるようになりました。しかしそのような時代にあるからこそ、今改めて救急医療の原点というべき「症状から病態に迫る」を意識したいと考えました。

今回の学術集会には、福井大学の林 寛之先生と八戸市立市民病院の今 明秀先生に来ていただきます。日本の救急医療の旗手であるお二人は、小児救急患者の診療に関しても豊かな経験と優れた見識をお持ちです。一人でも多くの中堅、若手の医療者が林先生、今先生のお話を伺い、またお二人と大いに議論し、交流して、その成果を明日からの診療・看護に生かすことができるよう期待しています。

特別な企画としては、1.「小児救急疾患の非典型症例をいかにマネジメントするか?」、2.「診療ガイドライン — 急性胃腸炎、急性虫垂炎」、3.「親の力を小児医療に活かそう」を考えています。1は、日常診療で遭遇する“非典型症例”について、症例を基に議論する企画で、2013年の学術集会(沖縄)で大きな反響を呼んだセッションの続編です。2は当学会の重要な事業である急性胃腸炎、急性虫垂炎の診療ガイドラインの完成を目前にして、学術集会で最後の議論をする場と位置付けています。3は診療を受ける患者家族側が問題提起、提案、活動報告をしてくださる、私たち医療者にとって稀有な機会です。

一般演題は原則としてポスター発表とし、気楽に討論できるように時間を充分取ります。症例報告、特に必ずしも上手く診療・看護できなかったケースや教訓的な症例を出していただいて、その貴重な教訓を皆で共有できる機会にしたいと思っています。自分たちはどうしたのかを示し、他施設ではどうしているのかを知ることが、一般演題セッションの役割だと考えます。また、学会初日の夕方には、学術集会の出席者と企業展示者の全員が参加できる懇親の場を創ります。リラックスした雰囲気の中で友人、知人との旧交を暖めるひと時になり、また新たな出会いの場にもなれば幸いです。

このような趣旨、趣向で第29回日本小児救急医学会学術集会を開催致します。2015年6月12日(金)、13日(土)、是非大宮ソニックシティにいらしてください。皆様にお会いするのを楽しみにしています。